【CSA C22.2 No. 301対応ガイド vol.3】カナダ連邦規制×CSA規格対応の盲点 ― EMC(電磁両立性)要件を解説

2025年になり、カナダの電気機械業界に大きな変化が訪れています。CSA C22.2 No. 301規格の2023年版が発行され、産業用機械の

設計・製造に新たな義務が加わりました。特に注目すべきは、これまで意外と見過ごされがちだった「連邦政府の電磁両立性(EMC)

規制」への対応です。

 

なぜ今、カナダ連邦規制に注目すべきなのか?

多くの製造者が気づかずにいたのが、「Industry Canada」(現ISED)が定める電磁波放射に関する規制。CSA規格に新たに明示された

ことで、メーカーは自社製品がこれらの規制に確実に適合していることを証明しなければなりません。これを怠ると、製品の市場投入や

販売に支障が出るだけでなく、信頼性の低下や法的リスクも避けられません。

 

連邦規制って具体的に何?

簡単に言えば、カナダ連邦政府は「工業製品が周囲の電子機器に悪影響を及ぼさないようにしなさい」と定めています。これが「ICES

規格」と呼ばれる一連の基準で、代表的なものに「ICES-001」(産業用・科学用・医療用機器向け)があります。産業機械の多くはこれに該当し、規格に基づく試験・表示・報告が義務づけられています。

 

新規格で何が変わった?

CSA C22.2 No. 301:2023では、これまであいまいだった連邦規制への適合義務が条文に明記されました。具体的には「機械はIndustry Canada(現ISED)の規制に適合して設計しなければならない」と強調されています。また、機械設置時のEMCに関する注意事項の明示も義務づけられ、ユーザー側の安全確保も後押ししています。

 

適合のための現実的な選択肢とは?

規格には、厳密な試験を行う方法と、「解析的アプローチ」と呼ばれる手法の2つが用意されています。後者は組み込まれる部品の適合

証明と配線指示の遵守で対応可能ですが、十分な説明責任が求められます。一方で、実際の放射試験は手間ですが、確実でシンプルな適合手段です。いずれにせよ、ISEDの承認が不可欠であり、規格に沿った対応が求められる点は変わりません。

 

今すぐ取り組むべき理由

この規制対応を怠ると、カナダ市場での販売停止やリコールなど、重大な経済的ダメージにつながります。しかも、カナダは英語・

フランス語の両言語での表示義務もあるため、言語面での準備も必要です。つまり、企業のブランドイメージとビジネス拡大に直結する

問題なのです。

 

まとめ

CSA C22.2 No. 301規格の2023年版は、電磁波放射に関する連邦規制への対応を明確化し、産業機械の安全性・信頼性を一段と高めることを目的としています。これからのカナダ市場での成功を目指すなら、今こそ電磁両立性(EMC)規制の理解と対策を最優先に進め

ましょう。

不安な点や具体的な対策についてのご相談も大歓迎です。製品の安全と競争力を両立させるために、一緒に最適な対応策を検討していき

ましょう!

お問い合わせはこちら

【CSA C22.2 No. 301対応ガイド vol.2】産業機械の設置に求められる“安全の本質”とは?

産業機械の安全設計・設置に関わる技術者や事業者にとって、CSA C22.2 No. 301規格の2023年改訂は見逃せない重要な変化です。
本コラムではシリーズ第2弾として、設置環境や非電気的なリスクといった、これまで曖昧だった領域に対し、明確な要件が追加された

内容を中心に解説します。

 

◆なぜ「環境要件」が重要視されるのか?

産業用機械が設置される現場は、クリーンルームから食品工場、素材加工現場、さらには屋外環境まで多岐にわたります。それぞれの環境が持つリスクは異なり、それに応じた安全対策が求められます。

今回の改訂では、特に以下の点が強化されました:

屋外設置向けエンクロージャに関し、最低保護等級「Type 3R」が明記され、紫外線耐性などの耐候性も必要に。

0℃以下での運用を想定する場合、機器の評価に加え、ヒーターや断熱材の実装まで検討対象に。

洗浄が必要な食品機械など、屋内でも湿潤な環境では、Type 2以上のエンクロージャが必要。使用状況に応じた柔軟な対応が求められ

ます。

つまり、「ただ動けばよい」時代は終わり、環境適合性こそが製品価値となるのです。

 

◆「電気以外の危険」にどう向き合うか?

もう一つ、今回の改訂で特に注目すべきなのは、非電気的リスクの明文化です。

従来、電気的な安全設計は当然の前提とされてきましたが、実際には機械の可動部、鋭利な部品、作業員との接触など、電気以外のリスクも数多く存在します。

今回の改訂では:

条項7.1において「非電気的リスクへの対応」が正式な必須要件として追加。

参照すべき規格として、

CSA Z432(機械の安全防護/ISO 12100、13849-1に準拠)

CSA Z434(産業用ロボット/ISO 10218-1, -2に準拠)
が明記され、リスクアセスメントや安全制御設計の体系が強化されました。

これにより、産業機械の評価は“機械トータルとしての安全性”が問われる時代に突入したといえるでしょう。

 

◆規格の改訂が示す“未来の機械安全”とは?

今回の改訂は、単なる技術的な要件の追加にとどまりません。
それは、カナダを含む北米市場が「実環境で本当に安全な製品」を求め始めているという明確なメッセージです。

特にロボットや自動化設備の普及が進むなかで、人と機械の協働における“非電気的な安全”の確保は避けて通れません。
製造業界の国際競争力を高めるうえでも、今回の改訂内容を理解し、対応していくことは欠かせないでしょう。

 

◆まとめ:CSA C22.2 No. 301の改訂は「選択」ではなく「必須」

産業機械を北米市場で展開する、あるいは国内でも高い安全性を追求したい企業にとって、CSA C22.2 No. 301の2023年改訂は“知って

おくべき知識”ではなく、“備えるべき義務”です。

 

次回のシリーズ3では、電気安全要件そのものの変更点について解説します。
製品開発・設計・安全評価に携わる方は、ぜひご一読ください。

お問い合わせはこちら

 

【CSA C22.2 No. 301対応ガイド vol.1】2023年改訂の全貌と製造業者への影響とは?

2023年末、カナダ電気規格に大きな変化が起きたことをご存知でしょうか?
製造業界や電気安全に携わる方なら見逃せないのが、CSA C22.2 No. 301「産業用電気機械」規格の第2版改訂です。これは単なる

マイナーアップデートではありません。産業用ロボットの追加や、適用電圧の拡大、除外範囲の明確化など、製品設計・認証・安全対応に直結する重要な変更が多数含まれているのです。

本コラムでは、改訂されたCSA C22.2 No. 301:2023のポイントをわかりやすく解説し、製造業者が今後直面する課題と対応の方向性

探ります。

 

そもそもCSA C22.2 No. 301とは?

この規格は、カナダ国内で使用される産業用電気機械の電気安全に関する基準であり、カナダ電気規程(CEコード)に適合するための主要な指針です。第1版は2016年に発行されましたが、実運用における課題が多く、認証機関ではほとんど活用されないままとなって

いました。

そして今回、技術委員会の再検討を経て満を持して登場したのが第2版(2023年版)です。

 

改訂の“目玉”はここだ!押さえておきたい主要変更点

1. 産業用ロボットが新たに対象に!
 ロボティクス技術の急速な進化を受けて、CSA C22.2 No. 301に産業用ロボットおよびロボット機器が正式に追加。これにより、認証時の適用範囲や要求事項が明確化されました。詳細な要件は、今後の続編で掘り下げていきます。

2. 電圧の上限が拡大 – DC機械も視野に
 従来はAC1000Vまでだった適用上限が、今回の改訂でAC1000VおよびDC1500Vに拡大。直流系機械の普及に対応するものであり、

再生可能エネルギー関連設備やバッテリー駆動装置を扱う企業にとっては、重要な変更です。

3. 適用除外の明確化で迷いなし
 以下のような製品には引き続き別規格の適用が求められます。
 - 公道走行用の車両機械 → 本規格の対象外
 - 家庭・業務用モーター駆動機器(例:自動車整備機器、エアコンプレッサー等) → CSA C22.2 No. 68を適用

 

将来的な改訂は?次の更新は2028年頃か

CSAでは5年ごとの見直しが義務づけられており、今回の第2版は今後しばらくの“最新版”として使われる見込みです。ただし、既にいくつかの軽微な誤記や調整事項が判明しており、これらは次回版(2028年頃想定)で修正される予定です。

 

なぜ今、この改訂を知るべきか?

この新しい規格は、製品設計から試験、認証、納入後の安全対応まで、多方面に影響を与えます。特に海外向け製品やグローバル市場での展開を目指す企業にとっては、「知らなかった」では済まされない内容が含まれています。

本シリーズでは今後、各変更点の詳細や実務上のポイントを掘り下げていきます。CSA C22.2 No. 301の改訂を正しく理解し、次の一手をどう打つか――それがこれからの競争力につながります。

お問い合わせはこちら