安全規格を解釈して機能安全要求事項を特定する
目次
- 1 機能安全が適用されるかどうかを判断する鍵は、単一の規則を探すことではなく、その適用を示す兆候を見極めること
- 2 まずは規格の目次と適用範囲(Scope)を確認する ― 最も重要な判断指標
- 3 「安全機能(Safety Functions)」や「安全関連システム(Safety-Related Systems)」への言及を確認する
- 4 リスクアセスメントまたはリスク低減を規格が要求しているかを確認する
- 5 プログラマブル制御または自動制御が使用されているかを確認する
- 6 機能安全規格が定める安全ライフサイクル
- 7 性能レベルまたは安全完全性レベルの要求事項を確認する
- 8 「機能安全」という言葉がなくても要求事項を見抜く
- 9 判断に迷う場合はリスクベースアプローチを適用する
- 10 まとめ
機能安全が適用されるかどうかを判断する鍵は、単一の規則を探すことではなく、その適用を示す兆候を見極めること
住宅用または商業用製品、産業機械、自動化システム、自動車用途、あるいは人や環境にリスクを及ぼす可能性のあるあらゆる技術を開発する際、必ずと言ってよいほど次の重要な問いが生じます。
「この製品には機能安全が必要なのか?」
一見すると単純な問いに思えますが、その答えは明確でないことがほとんどです。安全規格は複雑であり、機能安全が必要であると明示しているケースは多くありません。代わりに、その要求事項は適用範囲、定義、用語、リスクベースの判断基準の中に組み込まれており、慎重な解釈が必要です。
以下では、機能安全が適用されるかどうかを判断し、その判断を確信を持って行うための明確なフレームワークを紹介します。なお、各製品は固有の特性を持っており、製品や規格によって機能安全要求事項は必ずしも同一ではありません。
まずは規格の目次と適用範囲(Scope)を確認する ― 最も重要な判断指標
すべての安全規格には適用範囲(Scope)が記載されており、通常以下の内容が定義されています。
- 対象となる製品および用途
- 設置要件および適用される法規・規格
- 明示的な適用除外事項(規格が対象としない内容)
- 対象となる危険源、性能特性、場合によっては安全機能
また、規格の目次(Table of Contents)も有益な情報を提供します。以下のような項目が含まれている場合、機能安全との関連性を示している可能性があります。
- 安全システム解析またはリスクアセスメント要求事項
- 電子的保護回路および制御に関する条項
- 「機能安全」または「安全関連電子回路」に特化した附属書(Annex)や補足資料
- 電磁両立性(EMC)イミュニティ試験要求事項
「安全機能(Safety Functions)」や「安全関連システム(Safety-Related Systems)」への言及を確認する
機能安全とは、必要なときに安全機能が正しく動作することを保証するものです。
規格に以下の要素が含まれている場合、機能安全に関する考慮が必要である可能性があります。
- 危険源の特定、リスク分析およびリスク評価からなる安全分析の実施要求
- 安全機能および関連するリスク低減措置の特定
- SIL、PL、ASIL、Classなどの安全レベルの割り当てまたは目標設定
- 安全関連制御システムの妥当性確認(Validation)または検証(Verification)
よく使われる用語
| 主要用語 | 安全レベルに関する指標 |
|
|
これらの用語は、機能安全が要求されるアプローチの重要な要素である場合にのみ規格へ盛り込まれます。
リスクアセスメントまたはリスク低減を規格が要求しているかを確認する
規格が以下を要求する場合、機能安全は一般的にリスク低減手段の一つとして位置付けられます。
- 危険源およびリスクアセスメント(HARA)の実施
- 適切なリスク低減措置の特定
- HARAで特定された傷害の重大性、発生可能性、および回避可能性に基づくリスクレベルと目標安全レベル(PL、SIL、Classなど)の決定
例
- ISO 12100 はリスク低減を要求しますが、機能安全そのものを直接規定しているわけではありません。
- リスク低減が電子制御や制御システムに依存する場合、通常は以下の機能安全規格が参照されます。
- ISO 13849-1:機械安全における安全関連制御システム
- IEC 61508:E/E/PE(電気・電子・プログラマブル電子)安全関連システム
- ISO 26262:故障時に危険状態を引き起こす可能性のある自動車E/Eシステム
- IEC/UL/CSA 60730、UL 1998、UL 991、CSA C22.2 No.0.8:故障時に危険を生じる可能性のある自動電気制御機器
実務上の判断基準
必要なリスク低減措置が電子制御または制御システムに依存しており、特に火災、感電、人身傷害、爆発などの危険に関係する場合は、機能安全が適用されます。
プログラマブル制御または自動制御が使用されているかを確認する
機能安全は、安全関連機能が以下に依存する場合に重要となります。
- PLC(Programmable Logic Controller)
- ソフトウェアまたはファームウェアを実行するマイクロコントローラなどの組込みシステム
- センサ、アクチュエータ、その他の電子制御ハードウェア
規格では次のような表現によって示されることがあります。
- E/E/PEシステム
- プログラマブル安全システム
- 危険側故障確率(PFHd)、MTTFd、耐故障性の評価
- 製品ライフサイクルまたはシステムライフサイクル要求事項
場合によっては、ソフトウェア/ファームウェア開発プロセス、構成管理、あるいは検証・妥当性確認(V&V)についての要求事項も規定されます。
機能安全規格が定める安全ライフサイクル
一般的な機能安全規格では、以下を含む体系的な安全ライフサイクルが定義されています。
- 危険源分析
- 安全コンセプト策定
- システム設計
- 検証および妥当性確認
- 運用および保守
- 改修および廃止
性能レベルまたは安全完全性レベルの要求事項を確認する
一部の製品規格では、安全機能に対して最低限の安全レベルを明示的に要求しています。
規格がこれらのレベルの決定または達成を要求している場合、機能安全は任意ではなく、適合のための必須要件となります。
例
- IEC 61508 SILレベル(SIL1~SIL4)
- ISO/EN 13849-1 パフォーマンスレベル(PLa~PLe)
- ISO 26262 ASILレベル(ASIL1~ASIL4)
- IEC/UL 60730-1、IEC/UL 60335(Annex R)、CSA C22.2 No.0.8 の Class B、Class C
- UL 1998 の Class 1、Class 2
「機能安全」という言葉がなくても要求事項を見抜く
一部の規格では「機能安全」という用語を使用していなくても、その原則を要求しています。
典型的な表現例:
- 「危険源の特定、リスク分析およびリスク評価からなる安全分析を実施しなければならない」
- 「制御システムは故障状態においても安全な運転を保証しなければならない」
- 「システムは安全状態へ移行しなければならない」
- 「故障検出および診断機能を実装しなければならない」
- 「要求される信頼性を達成するため、冗長化または監視機能が必要である」
これらはいずれも、名称こそ異なるものの、機能安全の中核概念を反映しています。
判断に迷う場合はリスクベースアプローチを適用する
機能安全の必要性を判断するためのシンプルな原則があります。
電子制御または制御システムの故障が、人または環境に対する差し迫った危険を引き起こす可能性がある場合、機能安全が必要である。
この原則は、家電製品、機械設備、自動車、ロボット、プロセス制御、医療機器など、多様な分野に適用されます。
まとめ
機能安全が必要かどうかを判断することは、規格の中から単一の決定的な文言を探し出すことではありません。重要なのは、以下のような兆候を見極めることです。
- 規格が電子制御または安全関連制御システムを扱っているか
- 制御機能によるリスク低減措置を要求しているか
- SIL、PL、ASIL、Classなどの安全レベルに言及しているか
- ライフサイクルプロセス、診断機能、耐故障設計を要求しているか
これらのいずれかに該当する場合、その製品は機能安全の適用範囲に含まれる可能性があります。
機能安全は単なる規格適合のための要求事項ではありません。故障、異常、あるいは予期せぬ状況が発生した場合であっても、技術が安全に動作することを保証するための体系的なエンジニアリング手法です。
自動化やコネクティビティがあらゆる産業へ拡大している現在、機能安全の重要性はこれまで以上に高まっています。









