北米における現場検査|Field LabelingとField Evaluationsのプロセスと重要性
北米市場向けにカスタムメイドの産業機器を設置する際、現地の検査官(AHJ)から
「認証マークがない」と指摘され、機器の通電や稼働が許可されなかった経験はありませんか。
ULやETLといったNRTLによる量産前提の認証(Listing)を取得していない機器は、
安全性が確認できないと判断され、現場検査の段階で使用が保留される、あるいはプロジェクト全体が
停止するリスクがあります。
このような状況を回避するために不可欠なのが、Field Evaluation(現場検査)と Field Labeling
(現場ラベリング)です。カスタム機器や単発生産の装置は工場での認証が適用できないため、現地の
管轄当局(AHJ)が認める検査機関による Field Evaluation を受け、適合ラベルを貼付することで、
安全性が正式に確認され、迅速に使用許可を得ることができます。
本記事では、Field Evaluation のプロセス、法的・保険上のリスク、そしてインターテックが提供する
迅速な現地検査サービスについて詳しく解説します。
目次
Field Evaluationとは?―未認証機器のラストチャンス
北米市場で産業機器を設置する際、工場出荷時にULやETLなどのNRTL認証を取得していない機器は、
現地の管轄当局(AHJ)から安全性が確認できないと判断され、通電や使用が認められないリスクが
あります。こうしたケースで必要となるのが、Field Evaluation(フィールド評価)と呼ばれる現場
検査です。
Field Evaluationの定義と目的
Field Evaluation(フィールド評価)とは、工場出荷後に設置された電気機器・産業機器を現場で検査
し、米国の安全規格に適合しているかを確認するプロセスです。評価は、NFPA 70(NEC:National
Electrical Code)や NFPA 79(産業用機械の電気安全規格)、および適用されるUL/CSA規格の要求
事項を参照して実施されます。
UL、ETL などの NRTL 認証(Listing)を取得していない機器や、カスタムメイドの装置・一点物の
設備は、現地での使用許可を得るために Field Evaluation が必要となります。現場の管轄当局
(AHJ:Authority Having Jurisdiction)は、この評価結果とラベルを基に機器の使用可否を
判断します。
Field Labelingとは
評価の結果、機器が安全基準に適合していると認定された場合、検査機関は現場で「Field Label
(現場用ラベル)」を貼付します。このラベルは、当該機器が Field Evaluation によって安全性が
確認されたことを示すものであり、管轄当局(AHJ)が使用許可を判断する際の重要な根拠と
なります。インターテックでは、適合機器に「ETL Field Evaluated Mark」を貼付します。
このマークは北米全域の AHJ に広く認知されており、カスタム装置や未認証機器でも迅速に使用
承認を得ることができます。
対象となる機器
Field Evaluation の対象となる機器には、カスタムメイドの産業機器、単発・限定生産の装置、
既存設備を改造・レトロフィットした機器、工場で NRTL 認証を取得していない機器、そして海外
から輸入され米国の認証マークが付いていない機器などが含まれます。
これらの装置は、量産品のように工場での認証プロセスが適用できないため、設置後の現場で個別に
安全性を確認する Field Evaluation が必要となります。
NRTL認証との違い
Field Evaluation と NRTL 認証(UL、ETL など)の大きな違いは、評価の対象と適用範囲にありま
す。NRTL 認証は量産を前提とした認証制度であり、設計審査・試験に加えて、工場での定期監査
(FUS)を伴う継続的なプログラムとして、同一仕様の複数製品に適用されます。
一方で Field Evaluation は、特定の場所に設置された“個々の機器”を対象とする単発の現場検査で
あり、設置後にその場で安全性を確認する一度限りの評価です。量産品のように工場で認証プログラム
を適用できないカスタム機器や輸入設備などに対して、機器ごとに個別に実施されます。
なぜ現場検査が不可欠なのか?―法的・保険上のリスク
Field Evaluation は、北米市場で産業機器を安全に稼働させるための“実務上必須”のプロセスです。
適切な NRTL 認証マークがない機器をそのまま使用することは、通電拒否・操業停止・保険適用外と
いった重大なリスクを伴い、プロジェクト全体の進行に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
プロジェクト中断の危機
AHJ(管轄当局)が安全認証マークのない機器を発見した場合、通電や使用がその場で拒否される可能
性があります。多くのケースでは、AHJは機器に「レッドタグ(使用禁止)」を貼付し、安全性が適切
に証明されるまで稼働を禁止します。
設置後であっても使用が認められないため、現場の立ち上げが停止し、プロジェクト全体の遅延や追加
コストの発生につながります。Field Evaluation は、こうしたプロジェクト中断を回避し、現場で確実
に使用許可を得るための最終的な安全性証明プロセスです。
法的リスクと罰則
未認証の機器を北米で使用することは、NEC(米国国家電気規程)や地方自治体の建築・電気コードに
適合しない可能性があり、検査で不合格となるリスクがあります。具体的には、地方自治体による使用
禁止措置や操業停止、建築許可の遅延、追加の是正要求などが発生します。
また、労働者の安全確保義務を定める OSHA(労働安全衛生局)規則にも抵触する可能性があり、
重大な事故が発生した場合には罰金や法的責任が問われることがあります。これらのリスクは企業の
信頼性を損なうだけでなく、追加コストやプロジェクト遅延、事業継続への影響に直結します。
保険の適用外リスク
万が一、火災や感電事故が発生した際、保険会社が「未認証機器の使用」を理由に保険金の支払いを
拒否・減額する可能性があります。OSHA規則や地方法令(NEC など)に適合していない設備が原因
となった事故は、保険約款上の免責事項に該当することが多く、企業が修理費用や損害賠償を全額負担
しなければならないリスクが大きくなります。
Field Evaluationで評価される主要な基準
Field Evaluation では、主に NFPA 79(産業用機械の電気安全規格)と NFPA 70(NEC:National
Electrical Code)を基準として、機器の安全性が詳細に評価されます。NFPA 79 は 600V 以下の産業
機械に適用され、過電流保護、接地、配線方法、制御盤の構造、保護回路など、産業機械特有の要求
事項を規定しています。
一方で NFPA 70(NEC)は、米国の電気設備に関する最上位の法規として、建物・設備の配線方法、
保護装置、危険場所区分、そして「Approved(承認された)」機器の概念を定義しており、Field
Evaluation の判断基準として極めて重要です。
さらに、評価対象に応じて UL 508A(産業用制御盤)、各種 UL/CSA/ANSI 規格、製品カテゴリ固有
の個別規格など、その他の適用規格も参照されます。これらの規格に照らして安全性が確認される
ことで、AHJ による使用許可を得ることができます。
迅速なField Evaluationプロセスとパートナー選定
Field Evaluationは、適切な手順とパートナーを選定することで、プロジェクトの遅延を最小限に抑え
ることができます。ここでは、標準的なプロセスと、信頼できるパートナーを選ぶポイントを
解説します。
Field Evaluationの標準的なプロセス
書類審査と予備評価(Pre-evaluation)
まず、部品リスト(BOM)、技術文書、設計図面、配線図、仕様書などを提出し、NRTL が事前に
適合性を確認します。この段階で潜在的な不適合を特定し、必要な修正方針を検討します。
オプションとして、出荷前の工場で予備検査(Pre-Field Evaluation)を実施することも可能です。
現場での検査・試験(On-site Evaluation)
機器の設置完了後、検査員がサイトを訪問し、NFPA 70(NEC)、NFPA 79、適用される UL/CSA
規格に基づいて評価を行います。
構造・配線・接地・安全装置の確認に加え、絶縁抵抗、接地抵抗、機能試験などの電気的試験を
実施します。併せて、設置環境や使用条件(温度、湿度、危険場所区分など)も評価対象となります。
Field Label の貼付と評価レポートの発行(Field Labeling & Report)
基準適合が確認された機器には、現場でシリアル番号付きの Field Label を貼付します。同時に、適用
規格、実施試験、使用条件、ラベル番号を記載した詳細な評価レポートを発行します。このレポートを
AHJ(管轄当局)へ提出することで、設備の使用許可を正式に取得することができます。
パートナー選定の重要なポイント
Field Evaluation のパートナーを選定する際には、いくつかの重要なポイントを慎重に評価する必要が
あります。
スピードと対応力
プロジェクトの遅延を防ぐためには、短納期で現地へ出張できる体制、緊急案件への柔軟な対応力、
そして北米全域をカバーするサービスネットワークが不可欠です。Field Evaluation は現場での突発的
な課題として発生することも多いため、迅速にスケジュール調整できるパートナーが望まれます。
AHJ からの信頼性と正式な認定
評価結果が AHJ(管轄当局)に確実に受け入れられるためには、
- OSHA による NRTL 認定
- NFPA 790/791 に準拠した Field Evaluation プロセス
- AHJ からの高い認知度
が重要です。特に、北米の現場で広く受け入れられている検査機関を選ぶことで、使用許可の取得が
スムーズになります。
専門性と豊富な経験
NFPA 79(産業用機械)、NFPA 70(NEC)、UL 508A などの安全規格に精通した検査員を擁し、
多様な機器カテゴリへの Field Evaluation 実績を持つパートナーを選ぶことが重要です。
高度な専門知識を持つ技術者が担当することで、不適合の見逃しや過剰要求を防ぎ、スムーズな評価
が可能になります。
包括的なサポート体制
設計段階からの技術コンサルティング、出荷前の予備評価(Pre-evaluation)、現場での Field
Evaluation、そして将来的な NRTL 認証への移行支援まで、一貫したサービスを提供できる
パートナーは、長期的な安全戦略を構築する上で極めて有用です。
選定時の注意点
すべての Field Evaluation Body が同じレベルの品質や信頼性を提供しているわけではありません。
適切なパートナーを選ぶためには、いくつかの客観的な指標を確認することが重要です。
まず、NFPA 790(Field Evaluation Body の能力基準)および NFPA 791(Field Evaluation の
実施手順)への準拠状況を確認することが推奨されます。
これらは法的義務ではありませんが、Field Evaluation の品質と一貫性を確保するための重要な
基準として AHJ からも広く参照されています。
次に、IAS(International Accreditation Service)などの第三者認定機関による認定の有無を確認
することで、評価プロセスが国際的に信頼される基準に従っているかを判断できます。
これらの認定は必須ではありませんが、品質の高さを示す指標の一つとなります。
さらに、対象地域の AHJ(管轄当局)からの受け入れ実績、北米での対応経験、顧客評価や成功事例
なども重要な選定要素です。これらを総合的に判断することで、信頼性の高い Field Evaluation
パートナーを選定することができます。
インターテックの現場検査サービスでリスクを回避
インターテックは、OSHA認定のNRTL(Nationally Recognized Testing Laboratory)として、
北米全域で信頼される包括的なField Evaluationサービスを提供しています。
インターテックの提供価値
インターテックは、北米全域での迅速な現地検査体制により、緊急性の高い Field Evaluation に対応
し、プロジェクトの中断や遅延リスクを最小化します。北米各地に拠点を持つグローバルネットワーク
により、短納期での現場派遣が可能です。
また、設置前の出荷時に実施できる予備検査(Pre-Evaluation)サービスを提供しており、工場段階で
潜在的な不適合を事前に解消できます。これにより、現地での再作業や工程遅れを大幅に削減すること
ができます。
インターテックの ETL Field Evaluated Mark は、北米全域の AHJ に広く受け入れられており、その
起源はトーマス・エジソンの照明研究所に遡ります。120年以上の歴史を持つ ETL マークは、安全性
評価の象徴として高い信頼性と認知度を誇り、AHJ との連携により検査結果がスムーズに承認されま
す。さらに、Field Evaluation に留まらず、将来的な NRTL 認証(ETL Listed 認証)への移行も
見据えた総合的な安全対策を提案します。
インターテックは、設計段階での事前レビュー、出荷前の予備検査、現地での最終 Field Evaluation
とラベリング、量産化に向けた ETL 認証取得支援、そしてカナダの特別検査(CSA SPE-1000)
まで、一貫したサポートを提供しています。
インターテックに依頼する具体的なメリット
インターテックに Field Evaluation を依頼することで、通電・使用許可の取得を大幅に迅速化できま
す。検査員がその場で評価結果をまとめ、AHJ(管轄当局)にスムーズに提示することで、レッドタグ
が貼付された機器でも、状況に応じて即日または翌日のラベリングが可能なケースが多数あります。
また、第三者である NRTL による評価は、事故時の保険適用において重要な証明となります。
安全性が客観的に担保されることで、保険会社からの信頼性が向上し、保険金支払いのリスク低減に
つながります。
さらに、OSHA 規則、NFPA 基準、各自治体の建築・電気コードへの適合性を確認し、法令違反や操業
停止命令といった重大なリスクを未然に防ぐことができます。
インターテックは米国・カナダを含むグローバルネットワークを活かし、海外から北米に設備を輸出
する企業に対しても、現地検査員と本国エンジニアが連携して、言語・技術・文化のギャップを越え
た総合サポートを提供します。
インターテックの実績
インターテックは年間 3,000 件以上の Field Evaluation を実施しており、製造業の産業機械から
自動化・ロボティクス設備、HVACR 機器、食品加工機械、医療機器、エレベーター関連設備、
電気自動車充電設備(EVSE)まで、幅広い産業分野で豊富な評価実績を持っています。
この多岐にわたる実績により、産業分野ごとの特有の規格要求や運用条件を熟知しており、お客様の
機器タイプや用途に応じた最適な評価手法とソリューションを提供することができます。
Field Evaluationは北米市場でのビジネス継続に不可欠
北米市場で産業機器を展開する企業にとって、Field Evaluation は単なる追加手続きではなく、
ビジネス継続に直結する重要なプロセスです。未認証機器やカスタム設備の通電・使用を現地で許可
してもらうための、実務上不可欠な手段であり、プロジェクト中断、法的リスク、保険適用外と
いった重大なトラブルを未然に防ぐことができます。
特に、カスタム機器を北米に導入する場合、既存設備を改造する場合、日本から米国・カナダへ機器を
輸出する場合には、早い段階で Field Evaluation の準備を進めることが重要です。信頼できる NRTL
認定機関を選び、必要に応じて出荷前の予備評価(Pre-evaluation)や書類確認を受けておくことで、
現地での評価をスムーズに進めることができます。これにより、AHJ(管轄当局)とのやり取りが
円滑になり、設備の立ち上げを効率化できます。
Field Evaluation や Field Labeling に関するご相談は、インターテックジャパンまでお問い合わせ
ください。インターテックは、現地での Field Evaluation、Field Label の貼付、必要書類の準備
支援、米国・カナダ向け特別検査(SPE-1000)、量産品向けの NRTL 認証(ETL 認証)など、
評価・試験を中心とした実務サービスを提供しています。各工程において必要となる試験・評価
サービスを一貫して提供し、お客様の北米市場での製品展開を支援します。











