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欧州医療機器規則(MDR)への対応と認証取得の進め方

コラム

2021年5月に適用開始された欧州医療機器規則(MDR)は、従来の医療機器指令(MDD)に比べて

大幅に厳格化された規制であり、EU市場で医療機器を販売するすべての企業にとって対応必須の

法的要件となっています。MDRは指令から規則への格上げによりEU全域で直接適用され、

より厳しい臨床評価、技術文書審査、トレーサビリティが要求されるようになりました。

本記事では、MDRの基本概要から厳格化された要求事項、ISO 13485との違い、

そして効率的な認証取得プロセスまで、EU市場への医療機器投入を検討する企業が知っておくべき

重要なポイントを解説します。

記事を読むことで、MDR対応の全体像を把握し、認証取得に向けた具体的なアクションプランを

策定することができます。

 

欧州医療機器規則(MDR)とは?EU市場参入の必須条件

欧州医療機器規則(MDR:Medical Device Regulation)は、EU市場で流通する医療機器に関する

法的要求事項を定めた規則であり、2021年5月26日に適用開始されました。

従来の医療機器指令(MDD)と能動埋め込み型医療機器指令(AIMDD)に代わる新たな

規制として、医療機器の安全性と有効性をさらに強化することを目的としています。

 

MDRの法的性格と強制力

MDRの最も重要な特徴は、指令(Directive)から規則(Regulation)に格上げされたことです。

この変更により、EU加盟国での国内法への転換が不要となり、EU全域で直接適用される強力な

法的拘束力を持つことになりました。

 

MDRの要求事項を満たさなければ、EU市場で医療機器を販売することは法的に不可能であり、

違反の詳細は加盟国法に委ねられますが、罰則が科せられます。

製造業者、輸入業者、販売業者を問わず、EU市場に関わるすべての事業者に適用される包括的な

規制となっています。

 

適用範囲の拡大

MDRは従来のMDDよりも適用範囲が大幅に拡大されています。

医療目的を意図しない機器(美容目的の器具など)もMDR附属書XVIにより規制対象となり、

これらの機器は共通仕様(CS)への適合が義務付けられています。

さらに、医療機器と体外診断用医療機器(IVD)が組み合わされた複合製品については、

製品の主たる機能や意図する用途に応じて、MDRまたは体外診断用医療機器規則

(IVDR:Regulation (EU) 2017/746)のいずれかが適用されます。

このように、複合製品に対する規制が強化され、用途に応じた適切な評価が求められます。

 

ノーティファイドボディ(認証機関)の役割強化

MDRでは、クラスI(リスクが低い製品)の一部のみ自己宣言が可能であり、それ以外のクラスの製品

ついては、ノーティファイドボディ(認証機関)の関与が必須となります。

2025年10月現在、51機関がMDRのノーティファイドボディとして認定されています。

特に注目すべきは、従来のMDDで自己宣言が可能だった一部のクラスI機器についても、

MDRでは以下の場合にノーティファイドボディの評価が必要になった点です:

 

クラスI滅菌機器:滅菌状態で販売される機器

クラスI測定機器:測定機能を持つ機器

クラスI再使用可能手術器具:洗浄・滅菌後の複数回使用を意図した器具

 

参考資料「医療機器認証取得のための5つの必須ステップ」はこちらからダウンロードできます。

 

MDRが求める厳格な要件と製品クラス分類

MDRは従来のMDDと比較して、医療機器に対する要求事項を大幅に厳格化しています。

この厳格化は、患者安全の向上と医療機器の信頼性確保を目的として導入されており、製造業者には

従来以上の包括的な対応が求められています。特に、臨床評価の強化、技術文書審査の拡充、

トレーサビリティの強化、市販後監視(PMS)の強化という4つの主要な要求事項において、

大幅な変更が加えられています。

 

MDRで厳格化された主要要求事項

以下の4つの要求事項は、MDRにおいて従来のMDDから大幅に強化されており、

すべての医療機器製造業者が対応を求められる重要な領域となっています。

これらの要求事項への適切な対応により、製品の安全性と信頼性を向上させ、EU市場での競争力を

確保することができます。

 

臨床評価の強化

製品の安全性と有効性を科学的に証明するためのデータ収集が、MDDよりも厳格に求められるように

なりました。すべての医療機器について、製造業者は安全性、性能、さらに新しい要件として医療機器

の利点を裏付ける十分な臨床的エビデンスを提供する必要があります。

 

クラスIII機器や埋め込み機器については、臨床試験の実施要件がより厳格になり、製造業者は医療機器

専門ユーザーと患者が理解できる「安全性と臨床性能の要約(SSCP)」を毎年公開することが義務

付けられています。

 

技術文書審査の拡充

クラスIIa、クラスIIb、クラスIIIの機器は、品質マネジメントシステム(QMS)審査と同時に

製品グループごとの技術文書審査を受ける必要があります。

技術文書は、MDR附属書IIおよびIIIに基づいて作成し、製品の安全性と性能を包括的に

実証する必要があります。

 

トレーサビリティの強化

MDRでは、医療機器に機器固有識別子(UDI)システムの使用が義務付けられ、

製品のライフサイクル全体を通じたトレーサビリティの確保が要求されます。

これにより、製造業者と関係当局がサプライチェーンを通じて特定の機器を追跡し、

安全リスクが発覚した際の迅速なリコールが可能になります。

 

市販後監視(PMS)の強化

MDRでは、ノーティファイドボディによる市販後監視の権限が強化され、非通知審査や製品サンプル

チェック、製品テストが義務付けられています。

製造業者には毎年の安全性と性能報告書の提出が求められ、継続的な安全性監視体制の構築が

必要です。

 

リスクベースのクラス分類システム

MDRでは、医療機器はリスクの低い順にクラスI、クラスIIa、クラスIIb、クラスIIIの4つに分類され

ます。分類規則はMDR附属書VIIIに記載され、侵襲性、使用期間、患者または使用者に対する潜在的

危害を包括的に考慮してリスククラスが決定されます。

 


クラス

リスクレベル

代表的な製品例

適合の要件

クラスI(一般)

低リスク

包帯、メガネ、車椅子

自己宣言

クラスIs(滅菌)

低リスク

滅菌状態の包帯、滅菌ガーゼ

自己宣言 + ノーティファイドボディによる滅菌プロセス評価

クラスIm(測定)

低リスク

体温計、血圧計

自己宣言 + ノーティファイドボディによる測定機能評価

クラスIr(再使用可能手術器具)

低リスク

再使用可能な手術器具(メス、鉗子など)

自己宣言 + ノーティファイドボディによる再使用可能性評価

クラスIIa

中リスク

コンタクトレンズ、注射器

ノーティファイドボディ認証(QMS審査 + 技術文書審査)

クラスIIb

中・高リスク

人工呼吸器、輸液ポンプ

ノーティファイドボディ認証(QMS審査 + 技術文書審査)

クラスIII

高リスク

心臓弁、ペースメーカー

ノーティファイドボディ認証(QMS審査 + 技術文書審査 + 追加審査)

 

クラスIII機器や埋め込み機器については、臨床評価コンサルテーション手順(CECP)という

新しいプロセスが導入され、欧州委員会の独立した専門家委員会による追加審査が実施されます。

 

参考資料「医療機器認証取得のための5つの必須ステップ」はこちらからダウンロードできます。

 

MDRとISO 13485の違い

MDRとISO 13485は、どちらも医療機器の品質と安全性に関わる重要な要求事項ですが、

その性格と目的において根本的な違いがあります。両者の違いを正確に理解することは、

効率的な認証戦略を策定する上で不可欠です。

 

法的拘束力と適用範囲の違い

MDRは欧州連合の規則であり、EU市場で医療機器を販売する際の法的義務として直接適用されます。

MDRへの適合なしにはEU市場での販売は法的に不可能であり、違反には重い罰則が科せられます。

(具体的な罰則内容は各加盟国が定める)

 

一方、ISO 13485は国際規格であり、それ自体には法的拘束力はありません。

ただし、各国の規制当局がISO 13485を品質マネジメントシステムの要件として採用しているため、

実質的には規制要件として機能しています。

 

要求事項の範囲と深度

MDRでは、クラスIIa以上の機器について製品グループごとの詳細な技術文書審査が義務付けられて

います。この審査では、製品の安全性と性能を包括的に実証する技術文書の提出が必要です。

一方、ISO 13485では製品個別の技術文書審査は要求されておらず、品質マネジメントシステムの枠組みと

運用に焦点が置かれています。

 

MDRでは、すべての医療機器について厳格な臨床評価が要求され、特にクラスIII機器や埋め込み機器

ついては臨床試験データの提出が必要です。

ISO 13485では、臨床評価のプロセス管理は要求されますが、具体的な臨床データの内容については

規定していません。

 

品質マネジメントシステムの焦点

MDRでは、製品の安全性と性能を確保するための包括的な品質マネジメントシステムを要求し、

特に製品ライフサイクル全体のリスクマネジメント、厳格な市販後監視システム、トレーサビリティの

確保、継続的な臨床評価が強調されています。

 

ISO 13485は、医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格として、プロセスアプローチに

よる品質管理、文書化された手順の確立と維持、継続的な改善活動、顧客満足と規制要求事項への適合

重点を置いています。

 

MDRとISO 13485は対立する要求事項ではなく、相互補完的な関係にあります。

実際の認証取得では、ISO 13485が品質マネジメントシステムの基盤構築を担い、

MDRがEU市場向けの具体的な法的要件への対応を担うという統合的アプローチが効果的です。

多くの医療機器製造業者は、ISO 13485認証を取得した上で、MDRの追加要求事項に対応するという

段階的アプローチを採用しています。

 

インターテックジャパンのMDR適合支援サービス

インターテックジャパンは、インターテック・グループの欧州ノーティファイドボディである

Intertek Medical Notified Body AB(NB 2862)と連携し、医療機器のCEマーキング(MDR)認証を

含む包括的な適合支援を提供します。

グローバルに配置されたMDR専門チーム(欧州拠点を中心に世界各地)と、

日本国内の試験・評価機能を組み合わせ、効率的なEU市場参入を実現します。

 

【主要サービス】

技術文書審査支援(Annex II・III)/MDR適合性評価

臨床評価サポート(SSCP作成含む)

ISO 13485 認証/MDSAP 審査

試験サービス(電気安全・EMC・生物学的評価・ソフトウェア)

MDR認証と同時に、FDA、MDSAPなど他地域認証も効率的に取得可能です。認証取得後も規制変更対応など、継続的なサポートを提供しています。


【インターテックジャパンに依頼するメリット】

  • 豊富な実績と専門性

医療機器の試験・認証において長年にわたり培ってきた実績と専門知識を持つエキスパートが、

お客様のMDR適合プロセスをサポートします。

  • ワンストップソリューション

製品の安全性試験から、技術文書審査、QMS審査まで、MDR適合に必要なプロセスを

ワンストップで提供します。

  • グローバルな対応力

世界各国に広がるネットワークを活かし、MDR適合だけでなく、

MDSAPなど他のグローバルな規制にも対応します。


 

EU医療機器規則に関するお問い合わせはこちら

 

MDRへの対応でEU市場での競争力を強化する

MDRへの適合は、単なる法的義務ではなく、EU市場での競争優位性を確立する重要な経営戦略です。

厳格な要求事項への対応により、製品の安全性と信頼性が向上し、医療従事者と患者からの信頼獲得に

つながります。

また、MDRで求められる品質マネジメントシステムと技術文書は、FDA・MDSAPなど他地域の認証

取得にも活用でき、グローバル展開を効率化できます。

UDIシステムやEUDAMED(欧州医療機器データベース)への対応は、将来的な規制変更への対応力も

強化します。

インターテックジャパンは、認証取得から継続的な規制遵守まで、医療機器事業の成功に向けた包括的

パートナーシップを提供いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

EU医療機器規則に関するお問い合わせはこちら

参考資料「医療機器認証取得のための5つの必須ステップ」はこちらからダウンロードできます

この記事を書いた人

インターテックジャパン 電気・電子部門編集部

インターテックジャパン 電気・電子部門編集部

2005年にインターテックジャパン株式会社に入社。電気・電子部門の営業として、主にIT機器、医療機器、家電製品のEMC試験、無線試験、PSE試験などの各種試験・認証業務に従事。