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EUサイバーレジリエンス法とは?日本企業向けデジタル製品のセキュリティ対策ガイド

コラム

IoT機器やスマート家電など、デジタル要素を持つ製品のサイバーセキュリティを強化するため、

EUは新たな法規制「サイバーレジリエンス法(CRA)」を制定しました。

この法律は2024年12月10日に施行され、2027年12月11日から本格適用が開始されます。

本記事では、CRAの基本概要と対象製品、日本企業への影響、および必要な対策について

解説します。適切な準備により、法的リスクを回避し、EU市場での競争力を維持・向上させる

ための実践的な知識を得ましょう。

EUサイバーレジリエンス法とは?

EUサイバーレジリエンス法(Cyber Resilience Act:CRA)は、

デジタル要素を持つ製品のサイバーセキュリティと信頼性を向上させることを

目的としたEUの法規制です。

従来の任意的な取り組みから法的義務へと転換し、製品のライフサイクル全体にわたって

セキュリティ対策を義務付けています。

 

法律の定義と目的

サイバーレジリエンス法(CRA)は、正式名称を「デジタル要素を持つ製品の水平的サイバー

セキュリティ要件に関する欧州議会および理事会規則(EU)2024/2847」といいます。

この法律は、ハードウェアとソフトウェアの両方を含む「デジタル要素を持つ製品」に対して、

包括的なサイバーセキュリティ要件を設定しています。

 

CRAの主要な目的は以下の通りです。

  • 市場に投入される製品が設計・開発・製造段階から厳格なサイバーセキュリティ基準を

   満たすことの確保

  • 製品のライフサイクル全体にわたる脆弱性対応プロセスの義務化
  • 消費者と企業に対する製品のサイバーセキュリティ側面の透明性向上

 

この法律により、EU市場における製品のサイバーセキュリティレベルが統一され、

消費者保護が強化されることになります。

 

法的性質と施行スケジュール

CRAは「規則(Regulation)」として制定されているため、EU加盟国での国内法化が不要で、

全加盟国に直接適用されます。

これにより、EU全域で統一されたサイバーセキュリティ要件が確保されます。


施行段階 日程 内容
法律施行 2024年12月10日 CRA発効
CAB認定開始 2026年6月11日 適合性評価機関の認定開始
報告義務開始 2026年9月11日 脆弱性・インシデント報告義務の開始
全面適用 2027年12月11日 全要件の適用開始(猶予期間終了)

この段階的な実施により、企業は新しい要件への準備期間を確保できますが、

最終的な適用開始まで約3年間しかないため、早期の準備開始が重要です。

 

サイバーレジリエンス法が求めることと対象製品

CRAは、デジタル要素を持つ製品に対して包括的なセキュリティ要件を課し、

製品の設計段階から廃棄まで、ライフサイクル全体にわたる継続的なセキュリティ管理を

求めています。対象製品の範囲は非常に広く、多くの製品カテゴリーが含まれます。

 

CRAが求める主要要件

CRAは製品のライフサイクル全体にわたって包括的なセキュリティ対策を義務付けており、

設計段階から廃棄まで継続的なセキュリティ管理が求められます。

主要な要件は4つの重要な分野に分かれています。

 

セキュリティ・バイ・デザイン

製品開発の初期段階からセキュリティを組み込んだ設計を行うことが義務付けられます。

これには、脅威モデリング、セキュリティリスク評価、適切なセキュリティ機能の実装が含まれます。

 

脆弱性管理とインシデント対応

製品の脆弱性を継続的に監視・管理し、重大なセキュリティインシデントを当局に24時間以内に

報告する体制の確立が必要です。また、発見された脆弱性に対する迅速な対応と修正プログラムの

提供も義務付けられます。

 

セキュリティアップデートとサポート期間

セキュリティアップデートの提供期間をユーザーに明確に通知し、可能な限り自動更新機能を

提供することが求められます。また、セキュリティ更新とその他の機能更新は分離して提供する

ことが推奨されています。

 

技術文書と適合宣言

製品の適合性を証明する詳細な技術文書を作成し、EU適合宣言(DoC:Declaration of Conformity)

とCEマーキングを付与する義務があります。これらの文書は、製品の市場投入後10年間、または製品

サポート期間のいずれか長い期間保存する必要があります。

 

対象製品の範囲と具体例

CRAの適用対象は「デジタル要素を持つ製品(Products with Digital Elements:PDE)」と

定義されており、直接的または間接的にデバイスやネットワークに接続される製品が含まれます。

主には以下の製品が対象になります。


製品カテゴリー 具体例
コネクテッド家電

スマートテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン

IoT機器 スマートホーム製品、ウェアラブルデバイス、セキュリティカメラ
ネットワーク機器 ルーター、スイッチ、ファイアウォール
産業用機器 産業用制御システム、SCADA機器
ソフトウェア製品 アプリケーション、OS、組み込みソフトウェア
コンピューター機器 PC、タブレット、サーバー

一方、以下の製品は、他の法規制でサイバーセキュリティが規定済みのため除外されます。

  • 医療機器
  • 自動車
  • 軍事用機器
  • 認定航空製品
  • 船舶機器

重要な点として、製品がネットワークに直接接続されていなくても、

間接的に外部と接続可能であれば(例:スマートフォン経由での接続)、CRAの対象となる

可能性があります。

 

サイバーレジリエンス法が日本企業に与える影響・対策

CRAはEU域外の企業にも適用されるため、日本企業もEU市場で事業を展開する場合は、

対応が必要になります。

特にグローバルなサプライチェーンを持つ企業は、直接的・間接的に影響を受ける可能性が高く、

早期の対策検討が重要です。

 

日本企業への具体的影響

【直接的影響を受ける企業】

EU市場向けにデジタル要素を持つ製品を製造・販売・輸入する日本企業は、

CRAの直接的な適用対象となります。これには、完成品メーカーだけでなく、

コンポーネントや部品を提供する企業も含まれます。

 

【間接的影響を受ける企業】

EU市場に製品を投入する企業のサプライチェーンに組み込まれている日本企業も、

間接的にCRAの影響を受けます。EU企業から部品やソフトウェアのセキュリティ証明を

求められるケースが増加することが予想されます。

 

【サプライチェーン全体への波及効果】

CRAはサプライチェーン全体のセキュリティ体制を重視しており、最終製品メーカーは

部品供給者に対してもセキュリティ要件の遵守を求めることになります。

このため、直接EU市場と関わりのない企業でも、間接的に対応が必要になる可能性があります。

 

違反時の重い罰則

サイバーレジリエンス法(CRA)は、義務違反に対して非常に厳しい制裁を定めています。

罰金は違反内容に応じて3段階に区分され、全世界年間売上高(前会計年度ベース)に対する

比率または定額ユーロのいずれか高い方が適用されます。

 

【重大要件違反】

  • 対象:製品の本質的サイバーセキュリティ要件(Annex I)や製造者の中核義務(Article 13)

   重大インシデント報告義務(Article 14)など。

  • 罰金:最大1,500万ユーロまたは全世界年間売上高の2.5%のいずれか高い方。

 

【その他の義務違反】

  • 対象:経済事業者のその他の義務(例:輸入者・流通業者の義務、CEマーキング手続き、
    文書保存義務など)。
  • 罰金:最大1,000万ユーロまたは全世界年間売上高の2%のいずれか高い方。

 

【虚偽・不完全情報の提供】

  • 対象:当局または適合性評価機関に対し、不正確・不完全・誤解を招く情報を
    提出した場合。
  • 罰金:最大500万ユーロまたは全世界年間売上高の1%のいずれか高い方。

 

【市場是正措置】

これらの罰金に加えて、市場監視当局は以下の措置を命じる権限を持ちます。

  • 製品の回収命令
  • EU域内での販売・流通禁止
  • 不適合製品の撤去・修正指令

 

これらの制裁は、単なる金銭的負担にとどまらず、製品の市場撤退やブランド価値の毀損、

取引停止など企業の事業継続に深刻な影響を及ぼします。

したがって、CRA適合は法令遵守の枠を超え、企業戦略上の必須条件といえます。

 

企業が取るべき対策

CRAへの効果的な対応には、段階的かつ体系的なアプローチが必要です。

企業は自社の状況を正確に把握し、専門家との連携により確実な適合性確保を目指すことが

重要です。以下はCRAの各条文で義務化された内容に基づく一般的な実務ステップです。


対策段階 具体的な取り組み 重要性
対象製品の特定 自社製品のCRA適用可否判定、リスクレベル評価 対応範囲の明確化
ギャップ分析

現状のセキュリティ対策と法的要件の差分分析

対応優先順位の決定

セキュリティ体制構築

セキュリティ・バイ・デザイン、脆弱性管理プロセス確立

継続的な適合性確保

第三者評価活用

専門認証機関による適合性評価の実施

法的要件の確実な充足

継続的モニタリング 市場投入後のセキュリティ状況監視体制構築 ライフサイクル全体の対応

 

インターテックのCRA適合支援サービス

インターテックジャパンは、グローバルな認証・試験・検査サービスのリーディングカンパニー

として、EUサイバーレジリエンス法への適合を包括的にサポートします。

豊富な経験と専門知識により、お客様のCRA対応を効率的かつ確実に支援いたします。

インターテックグループ全体が持つ世界100か国以上のネットワークを活用し、

対象製品の特定からリスク評価、適合性評価、継続的モニタリング体制の構築まで、

CRA適合に必要な全プロセスをワンストップで提供します。特に高リスク製品については、

認定第三者機関として適合性評価を実施し、EU適合宣言とCEマーキングの取得を

サポートする予定です。

 

インターテックジャパンに依頼するメリット
  • 01

    ワンストップソリューション

    評価から認証まで一貫したサービス提供により、お客様の負担を軽減します。

  • 02

    国際的な信頼性

    グローバルに認められた認証機関として、世界市場で通用する認証を提供します。

  • 03

    専門的な知識とノウハウ

    産業用制御システムと機能安全の両分野における深い専門知識により、
    効果的なセキュリティ対策を提案します。

  • 04

    迅速な市場投入

    豊富な経験に基づく効率的な評価プロセスにより、製品・システムの迅速な市場投入を支援します。

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CRAへの対応でEU市場での競争力を高める

EUサイバーレジリエンス法への適合は、法的義務の履行にとどまらず、

製品の信頼性向上とブランド価値の強化につながる戦略的な取り組みです。

適切な対応により、EU市場での競争優位性を確保できます。

CRAは2024年12月10日に施行され、2027年12月11日から本格適用が開始されます。

違反時には重い罰則が科せられるため、確実な適合性確保が不可欠です。

日本企業においても、EU市場で事業展開する企業はもちろん、サプライチェーンを通じて

間接的に影響を受ける企業も多く、早期の準備開始が重要になります。

CRAへの適切な対応は、法的リスクの回避だけでなく、製品のセキュリティレベル向上、

顧客からの信頼獲得、国際競争力の強化といった多面的な価値をもたらします。

インターテックジャパンの専門的な支援により、効率的かつ確実なCRA適合を実現し、

EU市場での成功を目指しましょう。

EUサイバーレジリエンス法への適合支援に関するご相談、お見積りについては、

お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

インターテックジャパン 電気・電子部門編集部

インターテックジャパン 電気・電子部門編集部

2005年にインターテックジャパン株式会社に入社。電気・電子部門の営業として、主にIT機器、医療機器、家電製品のEMC試験、無線試験、PSE試験などの各種試験・認証業務に従事。