インドネシアの輸入規制を解説!最新の改正情報からSNI・ハラル認証まで紹介
ASEAN最大の経済大国であるインドネシアは、多くの日本企業にとって魅力的な市場です。しかし、その一方で、インドネシアへの輸出を成功させるためには、複雑で頻繁に変更される輸入規制への正確な理解が不可欠です。
特に2025年7月には、輸入規制に関する重要な改正が行われました。本記事では、この最新の改正点を中心に、インドネシアの輸入規制の全体像を分かりやすく解説します。
輸入ライセンスやSNI、ハラル認証といった基本的な規制から、輸出をスムーズに進めるためのポイントまで網羅的にご紹介します。
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目次
【2025年最新】インドネシア輸入規制の主な改正点
2025年、インドネシア政府は国内産業の保護と貿易手続きの効率化を目的として、輸入規制に関する複数の商業大臣規則を改正しました。
特に2025年6月30日に公布され、その60日後から発効する改正は、多くの品目に影響を与えるため、輸出事業者にとって事前の確認が極めて重要です。
商業大臣規則改正(2025年7月)の概要
今回の改正の大きな特徴は、従来一本化されていた輸入規制の根拠法令が、再び商品カテゴリー別に分割された点です。 これにより、事業者は自社が扱う製品カテゴリーに対応する規則を個別に確認する必要が生じました。
アイルランガ・ハルタルト経済担当調整相は、この改正が「複雑化する世界経済のダイナミクスの中で国家競争力を維持するため、必要な規制を緩和するもの」であると述べており、OECD加盟プロセスや各種貿易交渉を意識した動きであることが示唆されています。 輸出事業者にとっては、関連法令が多岐にわたるため、より一層の注意が求められます。
| 改正のポイント | 内容 | 輸出事業者への影響 |
| 法令の再分割化 | 従来一本化されていた輸入規制の根拠法令が、商品カテゴリー別に9つの商業大臣規則に分割された。 | 自社製品に関連する規則を個別に特定し、遵守する必要がある。 |
| 輸入承認(PI)要件の変更 | 一部の品目でPI要件が削除された一方、一部の品目では逆に要件が追加された。 | 品目によって手続きが簡素化される場合と、複雑化する場合がある。 |
| 全体的な方向性 | 規制緩和と国内産業保護のバランスを取る狙い。 | 最新の規制内容を正確に把握し、対応することが不可欠。 |
輸入承認(PI)要件が緩和された品目
今回の改正により、一部の品目については輸入手続きが簡素化されました。具体的には、林業製品をはじめとする10の商品カテゴリーにおいて、従来必要とされていた輸入承認(PI: Persetujuan Impor)の取得要件が削除されました。これにより、対象品目を輸出する事業者にとっては、リードタイムの短縮や事務的負担の軽減が期待できます。
ただし、PIが不要になったとしても、その他の規制(SNI認証など)が適用される場合があるため、総合的な確認が必要です。
輸入要件が厳格化された品目
規制緩和の一方で、国内産業との競合が激しい分野では要件が厳格化されています。その代表例が衣料品およびアクセサリーです。これらの品目を輸入する場合、新たに工業省からの技術診断書を取得することが、輸入承認(PI)を得るための前提条件として加えられました。
これは、国内の繊維産業を保護する目的があると考えられます。日本からアパレル製品を輸出している企業は、新たな手続きへの対応が急務となります。
インドネシア輸出の基本!知っておくべき主要な輸入規制
インドネシアへの輸出を検討する上で、最新の法改正と合わせて、基礎となる主要な規制を理解しておくことが不可欠です。ここでは、特に重要な4つの制度について解説します。
輸入ライセンス制度(NIB・API)の基礎知識
インドネシアで輸入業務を行うすべての事業者は、まず事業者登録番号(NIB: Nomor Induk Berusaha)を取得する必要があります。NIBは、事業者の身分証明書として機能し、輸入業者識別番号(API: Angka Pengenal Importir)としての役割も兼ねています。
APIには、完成品を輸入して国内で販売する商社向けの「一般輸入業者識別番号(API-U)」と、自社で利用する原材料や資本財を輸入する製造業者向けの「製造業者輸入業者識別番号(API-P)」の2種類があり、1社につき1種類しか取得できません。自社のビジネスモデルに合ったAPIの種類を選択することが重要です。
| ライセンス名 | 概要 | 主な対象者 |
| 事業者登録番号 (NIB) | 全ての事業活動の基本となる登録番号。 OSSシステムを通じてオンラインで取得する。 |
インドネシアで事業を行う全ての企業 |
| 一般輸入業者識別番号 (API-U) | 完成品や商品を輸入し、国内の第三者に販売するためのライセンス。 | 卸売業者、商社など |
| 製造業者輸入業者識別番号 (API-P) | 自社の生産活動で使用する原材料、補助材料、資本財を輸入するためのライセンス。 | 製造業者 |
【参考】貿易管理制度 | インドネシア – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ
強制国家規格(SNI)制度とは?
SNI(Standar Nasional Indonesia)は、インドネシアの国家規格であり、日本のJIS規格に相当します。多くの品目においてSNI認証の取得は任意ですが、政府が国民の安全、健康、環境保護などを目的に指定した「強制規格品目」については、SNI認証の取得と製品へのSNIマークの表示がなければ輸入・販売ができません。
対象品目は年々増加傾向にあり、2023年4月時点で355品目に上ります。 主な対象品目には、電子製品、鉄鋼製品、玩具、食品・飲料などがあります。認証取得には工場の査察や製品試験が必要となり、時間とコストを要するため、早期の準備が求められます。
【参考】インドネシア国家規格(SNI)に関するQ&A(2020年3月) | 調査レポート – 国・地域別に見る – ジェトロ
イスラム市場で必須のハラル認証
インドネシアは世界最大のイスラム人口を抱える国であり、ハラルへの関心が非常に高い市場です。インドネシア政府は、国内で流通するほとんどの製品・サービスに対してハラル認証の取得を段階的に義務化しています。2024年10月からは第一段階として、食品・飲料分野で義務化が開始されました。
今後、化粧品、医薬品などへも対象が拡大される予定です。日本の事業者がインドネシアに製品を輸出する場合、現地のハラル製品保証実施機関(BPJPH)が認める認証機関でハラル認証を取得する必要があります。
関税優遇措置に繋がる原産地証明書
日本とインドネシアは、日・インドネシア経済連携協定(IJEPA)およびASEAN日本包括的経済連携(AJCEP)協定を締結しています。
これにより、日本から輸出される産品が協定上の原産地規則を満たす場合、原産地証明書を提出することで、インドネシアでの輸入関税の免除または引き下げの適用を受けることができます。関税コストを削減し、価格競争力を高めるために、これらの経済連携協定の活用は非常に有効な手段です。
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【品目別】特に注意すべきインドネシアの輸入規制
インドネシアの輸入規制は、品目によって詳細な規定が異なります。ここでは、特に日系企業の輸出が多い食品・飲料、化粧品、電子製品について、特有の注意点を解説します。
食品・飲料の輸入における注意点(BPOMへの製品登録)
食品や飲料をインドネシアに輸出する際には、インドネシア食品医薬品監督庁(BPOM)への製品登録が必須です。この登録プロセスでは、製品の安全性や成分に関する詳細な情報が審査されます。
また、前述の通り、2024年10月からハラル認証が義務化されており、非ハラル製品(豚肉やアルコール飲料など)を除き、認証取得が不可欠です。
さらに、製品ラベルにはインドネシア語での表示が義務付けられており、成分表や賞味期限、ハラルマークなどを規定に従って正確に記載する必要があります。
化粧品の輸入で押さえるべきポイント(BPOMへの製品登録)
化粧品も食品と同様に、市場に流通させる前にBPOMへの製品登録(通知)が必要です。
この手続きにより、製品ごとに通知番号(NIE)が付与されます。特に、製品に含まれる成分には注意が必要で、インドネシアで使用が禁止・制限されている成分リストを事前に確認しなければなりません。
また、製品が肌に直接触れるものであることから、安全性に関する要求水準は高く、ハラル認証の義務化も2026年10月から開始される予定です。
電子製品・電気製品の規制内容(SNI認証とDJID認証)
電子製品や電気製品の多くは、強制SNIの対象品目となっています。例えば、冷蔵庫、ケーブル、照明器具などが該当します。SNI認証の取得に加え、インドネシア向けビジネスで重要な認証の一つとして無線認証があります。
無線機能を含む通信製品をインドネシアに輸入する場合、DJID認証(旧SDPPI認証)の取得が必須です。DJID(Direktorat Jenderal Infrastruktur Digital)は、旧SDPPI(Sumber Daya dan Perangkat Pos dan Informatika)から名称が変更されたもので、認証申請では主にRF(無線周波数)およびEMC(電磁両立性)の試験レポートが必要となります。
また、製品によっては、エネルギー効率に関するラベリング表示が義務付けられていることもあります。
一次電池の安全規制内容(SNI認証)
近年、特に注目すべき動きとして、電池に関する新たな規制が導入されました。インドネシア工業省は、一次電池(Primary Battery)に対する新たな安全SNI規制(工業省令第69号/2024年)を制定し、2025年5月20日から施行しました。
この規制により、インドネシアに輸入される一次電池は、単体だけでなく、ホスト機器とセットで輸入される場合や、製品に内蔵されている場合であっても、SNI認証の取得と規定の遵守が必須となります。電子機器や玩具など、電池を同梱・内蔵して輸出する多くの事業者にとって影響の大きい変更点であり、事前の対応が不可欠です。
インドネシアへの輸出を成功させるための実践的ポイント
複雑な規制を遵守し、スムーズな輸出を実現するためには、事前の準備と情報収集が鍵となります。ここでは、実務上の重要なポイントを3つ紹介します。
HSコードの事前確認
HSコード(商品の分類番号)は、適用される関税率や輸入規制を特定するための基礎となります。同じ製品でも、解釈によってHSコードが異なる場合があり、それが原因で通関時に想定外の規制対象となったり、高い関税が課されたりするリスクがあります。
事前にインドネシア側の輸入者や通関業者と協議し、製品に適用されるべき正しいHSコードを特定しておくことが、トラブルを未然に防ぐ上で極めて重要です。
【参考】品目分類とHS : 税関 Japan Customs
現地輸入業者との密な連携
インドネシアの輸入規制は非常に複雑で、運用が頻繁に変わることがあります。そのため、現地の最新情報に精通し、当局との折衝能力がある信頼できる輸入パートナーを見つけることが成功の鍵を握ります。輸入ライセンスの取得やBPOM・SNIなどの各種申請手続きは、現地の輸入者が主体となって進めるものがほとんどです。
日頃から密にコミュニケーションを取り、必要書類を迅速に提供できる体制を整えておくことが、手続きを円滑に進める上で不可欠です。
JETROなど信頼できる情報源の活用
インドネシアの輸入規制は、政府のウェブサイトなどで公表されますが、その多くはインドネシア語であり、解釈が難しい場合も少なくありません。このような場合、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)が提供する情報は非常に有力です。
JETROは、現地の最新のビジネス情報を日本語で発信しており、法改正の概要や実務上の注意点などを詳細に解説しています。 定期的にJETROのウェブサイトやビジネス短信を確認し、常に最新の情報を入手するよう心がけることが重要です。
まとめ
本記事では、2025年の最新改正点を中心に、インドネシアの複雑な輸入規制について解説しました。法令の再分割化や品目ごとの要件変更、そしてSNIやハラル認証といった独自の制度への対応は、インドネシア向けビジネスを成功させる上で避けては通れない課題です。これらの規制を正確に理解し、HSコードの事前確認や信頼できる現地パートナーとの連携を通じて、計画的に準備を進めることが、円滑な輸出の実現に繋がります。
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