NFPA 79 – 2024年版の改訂で新しくなった点:パート1
目次
NFPA 79の重要性とは
産業機械向けの電気規格「NFPA 79(産業機械の電気基準)」は、米国市場向けの産業機械における
安全な電気設計と設置の基準として、長年にわたり参照されてきました。最新版である2024年版は、2021年版を置き換えるもので、明快さの向上、最新技術との整合、そして現代的リスクへの対応を
目的としたいくつかの重要な改訂が加えられています。NFPA 79は、機械の電源回路端子から始まり、最大1000V ACまたは1500V DCで動作する機械に適用されます。
この規格は工作機械、ロボットシステム、包装ライン、産業用3Dプリンター、オートメーションセル
などの装置を対象としています。
米国で機器を設置する場合、このNFPA 79が審査機関や管轄当局(AHJ)によって最も多く参照される
規格です。
義務規定と許容規定の違い(簡単なおさらい)
NFPA 70(NEC)90.5条は、以下の3種類の規定を定義しています:
| 規定の種類 | 表現 | 実務上の意味 |
| 義務 | shall / shall not | 実行が義務、または禁止されている |
| 許容 | shall be permitted to / shall not be required to | 許容されているが、義務ではない |
| 説明的 | note / informative | 強制力のない情報や補足的な説明 |
この違いを理解することは、2024年版の新たな内容、特に4.10条(サイバーセキュリティ)を
解釈する上で重要です。
サイバーセキュリティが注目される理由:新設された4.10条
第4章で最も注目すべき追加項目が、ネットワーク接続された機械のサイバーセキュリティに関する
4.10条です。機械がますます
ネットワーク化され、リモートアクセス可能になるにつれ、サイバー攻撃の脅威も増加しています。
これらは安全性や運用の信頼性に直接影響を与えかねません。
重要なのは、この4.10条は「許容規定」として書かれている点です。つまり、すべての場合に自動的
に適用されるものではなく、顧客仕様、自社ポリシー、管轄当局、外部規制などによって適用が
求められる場合に実施が許可されるという形です。
なぜ安全性にとって重要なのか?
この条文の追加は、「安全」の考え方が拡張されていることを示しています。
サイバー攻撃が成功すれば、単なるデータ被害にとどまらず、機械の保護設定変更、
非常停止の無効化、SCADA信号の妨害、火災防護システムの無効化など、
機械の中核機能自体が脅かされます。これは、現代の産業環境において現実的かつ
拡大するリスクです。
4.10条が(適用される場合に)要求すること
4.10条が適用されるケースにおいては、以下の3本柱に基づく
サイバーセキュリティ枠組みが求められます:
| 柱 | 要求内容 | 実例 |
| 評価 | 接続システムの脆弱性分析 | PLC、HMI、ネットワークインターフェースの脅威検査 |
| 試運転時の認証 | 既知の脅威に対してシステムが耐性を持つことの文書化 | 第三者認証機関または社内証明書 |
| 文書化 | 評価・認証記録を関係者が参照できるようにする | 技術ファイルと一緒にサイバーセキュリティ関連記録を保管 |
また、以下のような追加的な期待事項も含まれます:
- セキュアな開発プロセスの採用
- データポート管理
- 信媒体の物理的保護
- 定期的な脅威レビュー
- セキュリティパッチの更新
OEM(機器メーカー)およびシステムインテグレーターへの実践的な提言
1. サイバーセキュリティは他の安全リスクと同等に扱うべき:
感電や火災と同様、設計段階で考慮が必要です。
2. 開発ライフサイクルにセキュリティ対策を組み込むこと:
変更管理、セキュアコーディング、インシデント対応計画などが、
審査の対象になる可能性があります。
3. パッチとレビューの仕組みを整備する:
脅威は常に進化するため、監視と更新の計画を文書化することが期待されます。
4. 適合性の証明に備える:
第三者認証、メーカーの自己宣言、または公的プログラムを通じて、検査をスムーズに進めるための
証拠を用意しましょう。
<インターテックの支援内容>
インターテックでは、2024年版NFPA 79の適合支援をエンド・ツー・エンドで提供しており、
サイバーセキュリティ関連の項目も対象としています:
- NFPA 79 2024年版とのギャップ分析
- サイバーセキュリティリスクアセスメントおよびSDLC(安全な開発ライフサイクル)相談
- IntertekのCyber Assured™プログラムによる試運転時の認証
- NFPA 79 + UL 508Aの統合評価(制御盤・アセンブリ向け)
私たちは、製品展開時のリスク軽減と、安全基準の変化に先手を打つサポートを提供しています。









